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[書籍] セツコの秘密
セツコの秘密
ハートマウンテンと日系アメリカ人強制収容のレガシー
本書について
ワイオミング州北西部の風が吹きすさぶ不毛の地に、石灰岩と古代の白雲岩からなるハートマウンテンと呼ばれる岩山がある。景観や地質学的な魅力はほとんどないが、アメリカの歴史の中で深く恥じるべき時代を見張る歩哨だ。
岩山は、アメリカの強制収容所としか表現しようのない場所を見下ろしている。アメリカ政府は第二次世界大戦中の一九四二年、西海岸の日系人を東京の軍閥の潜在的な諜報員とみなして自宅から立ち退きを強制し、この不毛な大草原に急きょ監獄を建設した。
一九四二年に一万人以上の日本人を祖先に持つアメリカ市民が列車に運べるだけの荷物を持ってこの地に到着した。商人、経営者、教師に漁師―アメリカ人の生活を支える人たち―の家族は、石炭ストーブで暖を取る程度の、粗末なバラックに住むよう命じられた。住人は一人一台、軍用簡易ベッドと毛布二枚を支給された。
外部の医療関係者とともに病院ができた。囚人―婉曲的に「抑留者」と呼ばれていた―の中にはジャーナリストがいて、週刊新聞を発行していた。進取の気性で知られる文化を持つ日系の囚人たちは、自分たちの手で子どもたちが学ぶ機会やレクリエーションの場を設けた。彼らは学校、スポーツ、ボーイスカウト、趣味のクラブ、庭園などを運営した。
アメリカ政府は、その歪んだ価値観を反映して、徴兵年齢の若者に兵役義務を課すことを決めた。憲法上の権利が回復するまで兵役に就くことを拒否した六三人の抵抗者は、裁判にかけられ、三年間の懲役を科せられた。徴兵拒否者として収監された一人の青年は、刑期を終え、釈放されると陸軍に入隊した。収監された人々と二世の志願兵と、どちらがより本物のアメリカ人だったのだろうか。
しかし、このような悲惨な状況下でも、二世は尊厳と、歴史的な家族や共同体の意識を持ち続けた。彼らは、厳しい規則を打ち破り、原始的な生活をやりくりする楽しい方法を見つけた。
戦後、故郷に帰ると、多くの人が事業を奪われ、経済的な健全性を取り戻すのに何年もかかるほど疲弊していた。アメリカ海軍はロングビーチの漁師が持っていたマグロ漁船を接収したが、漁師は決して補償されなかった。
今、新たな世紀を迎え、ハートマウンテンに閉じ込められた人々の子孫は、解説センターを設立し、古い建物の一部を復旧することで、この物語を現代のアメリカ人と世界に伝えている。そして何よりも重要なことは、彼らがこうした物語、法的・物理的な虐待を受けた苦しみ、暴挙にさらされたアメリカ市民の文化的遺産について、どんなにつらいことであっても、常に我々の歴史の一部でなければならないという決意を抱いていることだ。
初めてハートマウンテンを訪れて以来、それは私の心に深く刻み込まれたのだ。
目次
- 写真
- まえがき トム・ブロコウ
- プロローグ セツコの秘密
- 第1章 一世 すべての始まり
- 第2章 大統領行政命令九〇六六号 人生が奪われた
- 第3章 強制立ち退き、立ち入り禁止区域と仮収容所
- 第4章 ほこりと風にまみれた新居
- 第5章 忠誠心の証明
- 第6章 転住
- 第7章 レジスタンス
- 第8章 二世部隊 傑出した勇気
- 第9章 排外命令の終わり
- 第10章 前進
- 第11章 記念碑を建てる
- 第12章 過ちを認める
- 第13章 保存を勝ち取る
- 第14章 世代トラウマとモデル・マイノリティ
- 第15章 セツコの秘密、明らかに
- エピローグ 始まりの地へ
- あとがき アイリーン・ヒラノ・イノウエ
- 謝辞
- 日本語版刊行にあたって
- 訳者あとがき
- 日本語版謝辞
- 用語集
- 登場人物
- 主要参考文献
- 索引