ソフトウェアののカテゴリ分類について(前編)
バリデーションの目的は、完成したソフトウェアが要求事項を満たしたことを客観的な証拠の基づき検証することである。つまり、ソフトウェアバリデーションは、ユーザー要求仕様を満たせばゴールとなるのである。
GAMPでは、ソフトウェアのカテゴリを以下のように分類している。
- パッケージの標準機能がそのままユーザ要件を満たしている場合
GAMPではカテゴリ3と呼ぶ
例えば、分析機器、構造設備など - パッケージの標準機能を構成設定(コンフィギュレーション)して、ユーザ要件に適合させる方法
GAMPではカテゴリ4と呼ぶ
例えば、ドキュメント管理システム - パッケージの標準機能をカスタマイズして、ユーザ要件に適合させる方法
GAMPではカテゴリ5と呼ぶ
ここで注意が必要なことは、すべてユーザ要求を満たすようにソフトウェアを構築することがゴールであり、カテゴリを分類することがゴールではないということである。
筆者はしばしば、「このソフトウェアはカテゴリ何番でしょうか?」や「何とかカテゴリ4とできないでしょうか?」といった質問を受けることがある。これでは本末転倒である。
厚労省の「コンピュータ化システム適正管理ガイドライン」では、カテゴリ分類を強調しているが、世界の規制要件でカテゴリ分類を掲載しているのは日本のみである。FDAにもPIC/Sにもカテゴリ分類という発想はない。
MS-Excelで考えてみよう。
Excelをインストールしただけの場合、カテゴリは1となる。Excelをワープロ(文字、罫線など作成)として使用した場合は、カテゴリ3となる。
Excelに計算式を使用した場合(例:請求書)は、カテゴリ4となる。
ExcelにマクロやVBAなどのプログラムを書いた場合、カテゴリ5となる。
すなわちである。こういう質問はナンセンスである。「Excelはカテゴリ何ですか?」
正しくは「Excelのこういった使用方法はカテゴリ何ですか?」である。
また、Excelの1つのブックには、複数のシートが作成できる。1シート目を表紙とした場合、ワープロとして使用するためカテゴリ3となる。2シート目に計算式を入れたら、カテゴリ4となる。3シート目にマクロを書いたらカテゴリ5となる。
つまり、ITアプリケーションにおいて、カテゴリーは混在するのである。したがって、カテゴリ分類は意味をなさない。カテゴリ分類が有効なのは、構造設備や分析機器なのである。
ソフトウェアのバリデーションを実施する際に重要なことは、カテゴリ分類ではなく、リスクベースドアプローチをとることである。カテゴリ3であっても、抗がん剤や向精神薬などのリスクの高い医薬品を製造するならば、それなりのバリデーション 活動を要する。カテゴリ5であっても、ビタミン剤や栄養剤を製造するならば、バリデーションの程度は低くて済むであろう。
読者諸氏もカテゴリ分類の呪縛から解かれることを願ってやまない。