【ワンポイント】ユーザ要求仕様書の重要性について

ユーザ要求仕様書の重要性について

コンピュータシステムを導入する際にユーザ要求仕様書(User Requirements Specificaion:URS)を作成しているだろうか。
多くの企業では、URSを作成(文書か)せず、サプライヤに電子メールや口頭で要件を伝えているケースを見かける。

そもそもバリデーションは、コンピュータ化システムの仕様がユーザの意図した利用に適合していることを確認することである。
したがって、URSなしではバリデーションは出来ないことになってしまう。
規制当局がCSV査察を実施する際の最初の質問は「当該コンピュータ化システムは何を意図したものか。」ということである。
もしURSがなければ、当該コンピュータ化システムの意図した利用が説明できないことになっていまう。

ここで気を付けなければならないことは、URSはバリデーション文書ではない。バリデーションされる文書である。
すなわちGAMP 5などに従ってCSVを実施した場合、約60種類ものバリデーション成果物が作成されるが、それら成果物を作成するために必要な情報がURSに含まれていなければならない。
つまりURS対バリデーション文書の関係であり、1:60の比になるのである。

またプロジェクト毎にURSを作成しているケースをしばしば見かける。
例えば、2010年度にシステムの導入プロジェクトを実施したとしよう。次に2013年度に機能追加・変更プロジェクトを実施し、さらに2015年度にも機能追加・変更・削除を実施したとしよう。
この場合、2010年度にURSを作成し、2013年度には差分(つまり追加・変更分)のみのURSを作成し、また2015年度にもまた差分(つまり追加・変更・削除分)のみのURSを作成しているのである。
これでは、最新の当該コンピュータ化システムのユーザ要求が1冊にまとまっておらず、規制当局や監査担当者などの第三者が成果物を見て理解することができない。

URSに限らず、機能仕様書(Functional Specification:FS)や設計仕様書(Design Specification:DS)などの仕様書は、必ず1冊に集めて作成し、常に改訂しておくことが必要である。

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