医薬におけるバリデーションとは
FDAが1987年に発行した「Guidelines on General Principles of Process Validation」には、医薬におけるバリデーションの定義が以下のように記載されている。
“Establishing documented evidence which provides a high degree of assurance that a specific process will consistently produce a product meeting its predetermined specifications and quality characteristics.”
(文書化された証拠を確立してゆく作業であり、これはあらかじめ定めた仕様や品質にあった製品を継続的に生産するプロセスに対して、高度の保証を与えるものである。)
つまり医薬品はどのような変動要因(温度・湿度変化、原材料の質、作業工程など)があろうともあらかじめ定められた仕様と品質で製造できなければならない。
製品品質の分布
製品やプロセスのデータは、プロセスのアウトプットが規格内である通常の変動範囲が決まるように解析されるべきである。
不安定なプロセス
以下の例(1つの山がロット)では、品質が常時変動している。また平均が上下している。さらに変動も増減している。
最終的には全変動(Total Variation)も時間とともに増加している。
もしこれがアンパンを製造するのであれば問題ないかも知れない。
あんこが多かろうが少なかろうが、焦げていようが半生であろうがである。もちろん顧客からの苦情は来るだろう。
しかしながら、その安全性にはさほど問題はない。
もし医薬品で上記のように変動がおき不安定なプロセスで製造したとしたらどうであろうか。
ビタミン剤や栄養剤なら問題ないかも知れない。しかしながら抗がん剤、高ウィルス薬、向精神薬などのようにリスクの高い医薬品である場合は、患者に多大な健康被害を与えてしまうだろう。
安定なプロセス
そこでプロセスを安定させる必要がある。
どのような変動要因が重なっても、毎ロットで同じ仕様・品質で製造できなければならない。
構造設備(製剤設備)の性能(Performance)が求められる。ここで性能(Performance)とは直進性を意味する。
例えば、性能の良い自動車はハンドルを甘く握っていても直進する。すなわち直進性能が良いのである。
ちなみに多くの製薬企業では、プロセスバリデーションを3ロット実施していることが多く見受けられる。
その理由は、2ロットであると直進性が不明であるからである。少なくとも3点プロットしてはじめて直進性が分かるのである。
FDAはガイドラインにおいて少なくとも3ロットと記載していた。しかしながら何ロットのバリデーションが必要であるかは各企業で統計的手法により、十分な検討と証拠データの収集が必要となる。
良好な製品を首尾一貫して生産するプロセス
さらに必要なことはすべての製品が規格内(Spec Limit)に入っていなければならない。
通常の変動範囲を知ることで、コントロールされた状態か特定のアウトプットを製造できるのに一定の許容範囲にあるかが明確になる。変動幅を軽減し管理すると高度な品質保証になる。
プロセスの特性や繊細さに依存するが、管理する変動要因は以下の通りである。
- 温度/湿度/機器の外装・結露
- 電力供給上の変動/振動/光
- 環境汚染/プロセス水の純度/人的要因
- 原料の銘柄違い
原料ロット切り替わりによる原液粘度変動(製品の除去率性能に影響)