ポリ乳酸(PLA)の材料設計総合講座
📝本講演の概要
近年の深刻化する地球環境・資源・廃棄物問題の背景下、持続可能な開発目標(SDGs)としてのバイオプラスチックの中でも、ポリ乳酸(PLA)の世界的な生産・販売実績は約60万トン(2025年)と群を抜いている。数多くあるバイオプラスチックの中で、なぜPLAが選択されるのか?その背景には、PLAは単なる生分解性プラスチックではなく、既に旧来の石油系汎用プラと同等以上の性能レベルにあることはもとより、本来ならばトレードオフの関係にある生分解性と使用耐久性の両立、生分解性と抗菌・防カビ性の両立、耐熱性と耐衝撃性の両立などを可能にしている、正しく次世代スマートプラスチックとしての基本的要件を内包していることにある。
スマート(smart)とは「頭のいい」「利口な」「気のきいた」「無駄のない」「抜け目のない」「鋭い」という意味であるが、PLAの極めて単純な化学構造の中に秘められた奇跡のパラドックス構造を解明するために、PLA固有の特異的な生分解機構と分解(開始・速度)制御技術、抗菌・防カビ性の発現機序、耐熱・耐衝撃性の材料設計技術と共に、その成形加工や製品・市場開発動向についても紹介する世界的第一人者による渾身のセミナーである。
📋プログラム
1持続可能な開発目標(SDGs)としてのポリ乳酸(PLA)
11 地球環境・資源・廃棄物問題と生分解性プラスチック
1) 20世紀の石油を原料とする合成高分子化学工業が内包するパラドックス
2) 海洋プラスチック汚染問題の正しい理解と解決策
3) 自然界の真のリサイクルシステムとしての物質循環(炭素循環)へのリンク
12 PLAの基本特性
1) 原料は枯渇しない植物由来の再生可能資源(renewable resource)
2) バイオマス由来で地球温暖化に関与しない(carbon-neutral)
3) 安全衛生性、食品衛生性(safe and hygienic)
4) 抗菌・防カビ性(anti-bacterial and anti-fungal)
5) 自然環境(土壌、海水・淡水)下での完全生分解性(biodegradable)
6) 生体内分解・吸収性(bio-absorbable)
7) 製品使用後の再資源化(recycling)
①バイオリサイクル(bio-recycle)
・好気性発酵による堆肥化可能(compostable)
・嫌気性メタン発酵による生ごみ発電(garbage power generation)可能
②ケミカルリサイクル(chemical recycle)…原料ラクチドへの還元
③マテリアルリサイクル(material recycle)
13 PLAレジンメーカー
1) ニートレジン…ネイチャーワークス、トタル・コービオン、豊原集団他
2) コンパウンドレジン(高性能・高機能化PLAレジン)…ユニチカ
2ポリ乳酸の生分解性と耐久性の制御機構
21 分解(開始・速度)の支配的因子と制御機構
1) PLAの2段階2様式の特異的な生分解機構…生分解性と耐久性の両立
・第一ステップ…化学的加水分解(分子量、強度低下による形状崩壊)
・第二ステップ…生成した水溶性乳酸・オリゴマーを微生物が資化・代謝(生分解)
2) T
g
:58℃≒生ごみ堆肥化温度…分解開始トリガー(自動スイッチオン機構)内包
22 PLAの分解速度の制御…残留ラクチド、COOH末端基濃度と製品寿命
1) タイプS(残留ラクチド:多)…分解速度速い/製品寿命短い
2) タイプM(残留ラクチド:少)…中程度
3) タイプL(残留ラクチド:少,COOH末端基封鎖)…分解速度遅い/製品寿命長い
23 PLAの様々な使用環境下への応用展開
1) 生体内分解吸収性医用材料…タイプS又はM
2) 農林・園芸・土木・水産資材…タイプM
3) 使い捨て容器・包装資材、生活・衛生・雑貨…タイプM
4) 電気・電子機器筐体・部品、自動車内装材、リターナブル食器、3Dプリンター、楽器…タイプL
3ポリ乳酸の生分解性と抗菌・防カビ性の発現機構
31 ネズミ食害試験
32 プラスチックのカビ抵抗性試験…JIS Z-2911
33 生鮮イチゴ収納容器のカビ抵抗性試験
34 繊維の抗菌・防カビ性試験…繊維製品新機能評価協議会・抗菌防臭加工基準
35 PLAの生分解性と抗菌・防カビ性の発現機構
36 消費者から届けられた声
1) ボディタオル…長期間使用しても従来品のように嫌な臭いや着色がなく清潔
2) 生ごみ水切りネット…長期間使用してもヌメリ(バイオフィルム)形成による目詰まりなし
4ポリ乳酸の高性能化材料設計技術・・・既存石油系汎用プラと同等以上
41 成形加工性
42 耐熱性…荷重たわみ温度(DTUL)、熱変形温度(HDT)又は熱収縮率
1) 結晶性高分子の耐熱性支配因子…成形加工工程での結晶化速度
・主剤…高L組成ポリ乳酸(High %L PLA)
・添加剤…造核剤(分散型、溶解型)、結晶化促進剤、マルチ機能改質剤
2) 結晶化促進剤の成形加工分野別選択指針…成形加工時の溶融張力との関係
3) 耐熱性、透明耐熱性の到達レベル
・電気・電子機器筐体、部品…150 ℃/低荷重下(0.45MPa)
・食品容器…120~130℃ x 5分/電子レンジ加熱
・ティバッグ、飲用カップ…5~100℃/熱湯注入
・透明耐熱性(ヘイズ<5%)…130℃
43 耐衝撃性
1) 添加剤の選択・配合設計と作用機序
タイプ
具体例
相溶性
Tg,Tmへの影響
A
可塑剤
優
低下
B
ブロック共重合体、高分子界面活性剤
良
なし
2) 耐衝撃性の到達レベル
・電気・電子機器筐体、部品…9.6 kJ/cm
2
(シャルピー衝撃強度)
・シート成形品…落球法(100gの重りを50㎝の高さから)
44 耐熱性と耐衝撃性の同時付与…マルチ機能改質剤とその発現機構
45 寸法安定性
1) フィルムや繊維・不織布の後加工段階での熱収縮率低減
2) 射出成形品などの室温放置下、二次結晶化による経時劣化(収縮、そり)低減
5ポリ乳酸の成形加工と製品・市場開発動向
51 成形加工分野…繊維・不織布・モノフィラメント、フィルム・シート、
真空成形、射出成形、発泡成形(押出発泡、ビーズ発泡)、ブロー成形
52 用途・製品・市場開発動向<多数の製品写真で説明>
1) 自然環境下(3~5年)で使用する農林・園芸・土木・水産資材
2) 短期間(~1年)使用の使い捨て食品容器・包装材、食器具、生活・衛生資材
3) 中期間(3~5年)使用の衣料、生活雑貨、産業資材
4) 長期間(5~10年以上)使用の電気・電子機器筐体・部品、自動車内装部品、産業資材、リターナブル食器、3Dプリンター、楽器
□質疑応答□
👤講師
🗓開催概要
| 開催日時 |
2026年12月3日 (木) 10:00~17:00
|
|---|---|
| 受講形式 | Zoomによるライブ配信 |
| 受講料 | 60,500円(税込) 本体55,000円+税5,500円 |
| 配布資料 | 製本テキスト(開催日の4日前を目安に発送予定) ※開催まで4営業日~前日にお申込みの場合、セミナー資料の到着が、 開講日に間に合わない可能性がありますこと、ご了承下さい。 Zoom上ではスライド資料は表示されますので、セミナー視聴には差し支えございません。 |
| 備考 | ※講義中の録音・撮影はご遠慮ください。 ※開催日の概ね1週間前を目安に、最少催行人数に達していない場合、セミナーを中止することがございます。 |
〒450-0002 愛知県名古屋市中村区名駅3-4-10 アルティメイト名駅1st 2階